塔とラプンツェル_071117

先日、川の写真を何枚か撮っていたら妙に目立つ塔があった。
知っている建物のはずだけれど、奇妙に心当たりがない。
あんな高さの塔があの場所にあったっけ。
建築中なのか、壊しているところなのかもよくわからない。
もっとも今この瞬間にとってはどっちでも同じだけど。
現実でも本当に夢のような時間がときどき流れることがある。
いい夢もあり、悪い夢もあり、ぼんやりとよくわからない夢もあり。
目の前の塔が夢であれば、多分、いちばん上に、ラプンツェルが住んでいるんだろうと思う。
やあい、ラプンツェル。おまえの髪を下ろせ。
ちくま文庫の『グリム童話』、池内紀の素っ気ない訳のバージョンでは、こんなフレーズだった。塔の下で王子がこう叫ぶと塔の上に幽閉されているラプ ンツェルは自分の長い髪を下ろす。王子はそれを伝って塔を上り、2人の時間を過ごす。いろいろあって別れ別れになり辛い目にあうが、最終的に再会し、ハッ ピーエンドになる。よくある展開なのにこの話の印象が強いのはきっと塔のせい。塔の上の不安定な空間で享受する幸せは、その裏側に大きな破綻への契機を隠 している。
90年代の後半、長女が小学生で次女が小学校にあがる前後、どういうわけか、毎晩ベッドでちくま文庫版のグリム童話を読んできかせた。基本的にぼくが一度きちんと読んでおきたかったこともある。アレンジされていないものを探したところ、たまたまこれが見つかった。
2人とも自分で本が読めるのに、読んで聞かせてもうらことを喜んだのは、単純に楽に本が読めるから、ということではなさそう。朗読も一種の芸能で、ぼくもそれなりにうまく読めていたに違いない。毎日せがまれ、何話も読まされた。
いくつかの話は、何がおもしろいのかわからないけれど、子どもたちに大人気だった。ラプンツェルもその1つ。「やあい、ラプンツェル、おまえの髪を下ろせ」というフレーズがいいらしい。
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